
これは数年前、専業主夫だった「俺」が、自分で地雷を踏み抜いた話。
うちは“嫁が働き、俺が家を回す”という形でスタートした夫婦だ。話し合って決めたもので、嫁も納得済み。
……のはずだった。
だが、周囲の目は正直痛かった。
特に古い価値観の老人たちが、俺たちを見るたびに
「生意気な女と、甲斐性のない男」
と言わんばかりの空気を出してくる。
その視線に耐えられなくなった俺は、ある日とんでもない提案をしてしまった。
「俺が外で働いてて、お前が専業主婦ってことにしてくれ」
当然、嫁は拒否。
「私がいつも家にいないのに、どう専業に見せるの?」
「私を“金食い虫の浪費女”にしたいだけじゃん」
強い言葉で返され、俺もムキになり、怒鳴り散らした。
嫁は怒りつつも、俺の浅はかな提案に呆れていた。
さすがにやりすぎたと謝ったが、彼女の中で何かが変わってしまった。
その後、俺はさらに追い打ちをかけるように
「じゃあ俺の母を介護してて家にいないことにしろ」
と再提案。
嫁は完全に不貞腐れ、家庭の空気は最悪に。
その中で、俺は自分の情けなさが見えていなかった。
俺が専業主夫になったのは、職場で何度も人間関係を壊して転職を繰り返した結果。
“あなたは外で働くのが辛いんでしょ?”
そう嫁が受け止めてくれたからこその専業主夫だったのに、俺はその“救い”を当たり前だと思っていた。
さらに状況は悪化し、嫁が趣味のゲームをすると腹が立ち、
「俺が作った飯も食わないのか!」
と勝手にゲームデータを初期化する暴挙。
嫁は静かに荷物をまとめ始め、俺はようやく気づいた。
“離婚されたら困るのは嫁の方だ”
そう思い込んでいたのは、俺だけだった。
専業主夫を選んだのに自分を誇れず、嫁を巻き込み、嘘で世間体を繕おうとし、最後には脅しのように離婚届まで渡す俺。
気づいた時には、完全に詰んでいた。
相手を守るふりをして、本当は自分のプライドしか見ていなかった。
外野よりも、まず目の前の伴侶を大切にすべきだった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
次のページ