父が亡くなった。
その知らせを受けた瞬間、悲しみに包まれたのはもちろんだが、次に頭をよぎったのは“お金”のことだった。
というのも、数年前に母が亡くなった際、想像を超える葬儀費用や税金の支払いに直面した記憶があったからだ。
そのとき、病床の父は弱い声で私に言った。
「お前、もしもの時は、通帳の金を少しずつ引き出しておけ。すぐ凍結されて困るからな」
その言葉は今でもはっきりと耳に残っている。
人が亡くなると、その人名義の銀行口座は凍結される。
これは、相続トラブルを防ぎ、遺産の分配を公平にするための措置だ。
しかし、凍結は金融機関が「死亡の事実」を認識した後に行われるため、それまでの間であれば、キャッシュカードと暗証番号があればATMから引き出すことが可能だ。
ただし、引き出し可能額には上限がある。多くの金融機関では1日あたり50万円程度。複数日に分けて引き出す必要があるが、それも病床でのやりとりとなれば一苦労だった。
こうして引き出したお金は、葬儀費用や税金の支払いにあてられた。
問題なのは、その金額も「相続財産」に含まれるという点だ。
相続人が複数いる場合、勝手に使えば不信感を生む。だが私は、すべての領収書を保管し、金額と支出用途を記録した。
後の遺産分割協議で「これは葬儀のために使った分です」と説明できるようにしておいた。
そして何より注意すべきなのが、「引き出したら相続放棄ができなくなる」可能性。これは、現金を使うことで“遺産を受け取る意思がある”とみなされる「単純承認」に該当するためだ。
ユーザーレビュー :
1.母が亡くなった時、想像以上にお金がかかりました。 それを目の当たりにしてた父が亡くなる直前に、口座預金を引き出して置くように指示があり、問題ありませんでした。但し、限度額を超える場合は本人確認が必要で、病床からの携帯のやり取りは大変でした。終活なんて言葉が出始めた時代の事。父の最後の配慮はありがたかったです。
2.相続人間での関係が良好なことが前提ですね。引出し可能だから引き出しただと、相続人間で不信感を与える可能性もあります。引き出した金額が相続財産に入れてあれば税務署は文句を言わないでしょう。残高証明+現金(引き出した金額)であれば良いのです。
また葬儀費用(一定の範囲)は相続財産から控除されます。
3.この記事は、他の記事が、成年後見人制度を利用しましょう、とか、裁判所に凍結口座の一部解除を申請しましょう、とかいう、一般人にはとても手続が大変で面倒で金がかかる制度を推奨しない分、現実的な良い記事だな 本当は他人の口座を使うのは問題だろうけど、現実問題、親が長期入院や施設入居となると、治療費や施設費の支払いも難しくなるから、子なりが口座の暗唱番号を聞いて運用しないと、現実的に本人は野垂れるしかなくなるからね。葬儀代もそう ただ、相続で揉めると嫌だから、領収書などはちゃんと保管しておかないとね
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