ある田舎町の駅前スーパーには、よく利用される駐車場があった。駅前という立地から、買い物客以外も利用することが多く、「買い物以外の利用はご遠慮ください」との看板があっても、短時間の利用にはお咎めなしの空気が漂っていた。しかし、ある時期から迷惑なDQN車が停められるようになり、駐車場の利用者たちは頭を悩ませることになった。
DQN車は大きなミニバンで、朝から晩まで駐車場に居座り続ける上、斜めに停めることで3台分のスペースを占拠していた。さらに、車の通り道まではみ出して駐車するという、まさに迷惑の極みであった。
私は小型車を利用していたため、なんとか駐車できたが、大きめの車の利用者たちは困り果てていた。それでも、誰もが見て見ぬふりを続けていた。
その駐車場にはもう一台、名物車があった。それは毎日買い物に訪れる推定80歳のおばあちゃんの軽自動車だった。おばあちゃんは運転は上手だが、駐車が苦手でいつも斜めに停めていた。しかし、軽自動車ということもあり、被害は少なく、買い物が終わればすぐに帰るため、大きな問題にはならなかった。それどころか、たまに綺麗に駐車できていると、利用者たちは「今日は上手く停まってる」と微笑ましい光景となっていた。
おばあちゃんは誰にでも挨拶するフレンドリーな性格で、私の娘も「ミラのおばあちゃん、いるねー」と会うのを楽しみにしていた。
しかし、ある日事件が起こった。雨上がりでスーパーの床が濡れていたため、おばあちゃんが店内で転んで腰を打ち、救急車で病院に運ばれることになった。怪我は軽かったが、高齢ということもあり、そのまま入院することになった。
その日、おばあちゃんは迷惑駐車をしているDQN車の真後ろに自分の軽自動車をぴったりと停めていたため、DQN車は車を出せなくなった。
DQN車の運転手はクラクションを鳴らしまくり、警察が駆けつける騒ぎとなった。
おばあちゃんの車は後日、彼女の子供か孫が引き取りに来て、ようやくDQN車も解放された。その後、DQN車は二度と駐車場に現れることはなかった。
先日、駐車場で娘がおばあちゃんの軽自動車を見つけ、「ミラのおばあちゃん、戻ってきたね」と嬉しそうに教えてくれた。おばあちゃんが無事退院できたことを知り、私も胸が温かくなった。
この物語は、日常の中での小さな勇気と人間模様を描いている。誰もが見て見ぬふりをしていた迷惑駐車に対し、おばあちゃんの一件は意図せずに解決策をもたらした。
また、フレンドリーで親しみやすいおばあちゃんの存在が、地域社会にとってどれほど重要であるかを改めて感じさせてくれた。
私たちの日常には、ちょっとしたトラブルや困難が付き物だ。しかし、その中での人々の行動や関わりが、意外な形で物事を解決に導くこともある。この物語を通じて、少しでも心温まる瞬間を感じていただければ幸いだ。おばあちゃんのような存在が、私たちの日常にどれだけの癒しと安心をもたらしてくれるのか、再認識する機会となった。
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