「10キロ痩せたら考えてあげてもいいよ」
大学時代の憧れの先輩に、卒業直前ダメ元で告白したときに返ってきたのは、そんな上から目線の返事だった。
それでも諦めきれず、半年間の努力の末に10キロの減量に成功。ようやく付き合えることになった。
交際は順調に始まり、3ヶ月ほど経ったころ、私は母に先輩を紹介した。母は、娘が初めて連れてきた恋人を嬉しそうに迎え、手料理をふるまった。食事の後、母と先輩は連絡先まで交換していた。とはいえ、内容は「昨日はごちそうさまでした」「また遊びに来てね」といった軽いものだった。
だが、幸せな時間は長くは続かなかった。
ある日、先輩の浮気が発覚。
しかも、浮気相手からは「本命は私で、あなたが浮気相手」とまで言われる始末。3人で話し合ったが、彼が連れてきた女性は彫りの深いハーフ風の美人で、気後れした私は自ら身を引くことに決めた。
せめてもの意地として、自分からは一切連絡しないと決めた。彼の連絡先を全て削除し、自分のメールアドレスを変更、着信拒否も設定した。
それから2週間後——母のもとに、奇妙なメールが届いた。
件名:ママ、お元気ですか?
「ママに会えなくて寂しいよ。
私子ちゃん、ひどいんだよ!まさ君に黙ってアドレス変えたんだよ!ぷンぷン!
友達も教えてくれないし、もうママだけが味方なんだよ。
ママのパエリヤン、また食べたいなぁ。
……アドレス教えてくれないと、カエルの死骸ばらまいちゃうぞ?」
それに対する母の返信は、予想以上に痛烈だった。
件名:バカですか?
「私はあなたのママでも味方でもありません。
娘を傷つけたあなたに、パエリヤどころかカップラーメンも出す気はありません。
いい年した男性が“僕って可愛い”アピールのメールなんて吐き気がします。
今後このような気持ち悪い連絡は一切送らないでください。
カエル云々の脅しは、脅迫と見なして永久保存します。
娘に近づいたら、カエル程度じゃ済まないと思ってくださいね」
それ以降、彼からの返信はなく、カエルがばらまかれることもなかった。
そして5年後、私は別の誠実な男性と結婚することに。ある日、母が「見せたいものがある」と言って、例のメールのやりとりをそっと差し出してきた。
あの時、自分の代わりに怒ってくれた母の存在が、今の私を支えてくれている。母のパエリアは、やっぱり誰よりも“味方”の味だった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
次のページ引用元:https://www.youtube.com/watch?v=bQgc_jh7mYU,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]