それは、ある平凡な夕方にかかってきた一本の電話から始まった。受話器の向こうで義母が開口一番、こう切り出した。「ちょっとあんたたち、共働きで子どももいないんだから、毎月2万円くらい義弟夫婦に送ってあげなさいよ」
あまりの唐突さに耳を疑った。続けてこう言う。「義弟は派遣社員で、今4人目を妊娠中なの。生活が大変なのよ。協力して当然でしょ?」
言葉の端々から、それは義弟の妻——つまり義弟嫁が言わせていることが透けて見えた。
確かに、私たち夫婦には子どもがいない。だがそのぶん、老後や不測の事態に備えて、地道に貯蓄を続けてきた。赤の他人ではなくても、安易な援助には踏み切れない理由がある。
面倒になった私は、電話を切ったあと夫に一任した。
「こんな電話があったから、あなたから返事しておいて」
すると、夫は一言。「『避妊の仕方を覚えろ。同居して、嫁も働け。話はそれからだ』って言っとけ」そう言い放って、電話を切ったのだった。
痛快だった。心の底から、夫に感謝した。
義弟夫婦に関しては、過去にも度重なる“要求”があった。3人目を妊娠したときには、トメ経由で高額な出産祝いを要求されたこともある。
その時夫は毅然とこう言っていた。「まずは正社員になれるように努力しろ。子どもを作るのはそのあとだ」
だが返ってきたのは、義弟嫁からの逆ギレだった。「そんな働き方されたら、自由に休めなくなるじゃない。育児も手伝ってもらわないと困るし、父親なんだから当然でしょ?」「父親なら、まず稼ぐべきだ」と言っても、義弟は曖昧な態度を取り続けた。
一度「同居でもしたらどうか」と提案したこともある。トメの目がその瞬間、明らかに輝いていたのを、私は今でも覚えている。だが結局、義弟夫婦は延々と言い訳を続け、同居すらしなかった。
極めつけは、私が「これ以上妊娠しないよう、女性も避妊を意識すべきでは」と口にしたときのこと。「避妊具を買うお金だって高いのよっ!」と言われた。あ然とした。
避妊具は千円前後。しかし、子ども一人育てるのにかかるのは数千万円だ。そのバランス感覚のなさに、言葉を失った。
それでも、義弟夫婦は今も私たちの家庭を「財布」と見なしているようだ。子どもがいないぶん、お金に余裕があるとでも思っているのだろう。あるいは、私たちがそのうち養子として子どもを引き取ることすら視野に入れているのかもしれない。
現実には、義弟家のように計画性なく子どもを増やし、他人に頼る生活を続ける限り、援助額は膨らむばかりだ。トメは、自分の老後の面倒までも私たちに押しつけるつもりなのだろう。
だからこそ、最初の「NO」が肝心だ。私たちは、私たちの家庭を守る。
他人の無計画を、当然のように補填させようとするその考えこそが——真の非常識なのである。
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