アルバイトを終えた帰り道、駅前のロータリーを歩いていた時だった。背後から突然「キャーッ」という甲高い叫び声が響いた。何事かと思って振り返ると、若い女性が手元から財布のようなものを落とし、中から小銭が四方八方に飛び散っていた。
驚きつつも、私はとっさにその小銭を拾い集めて彼女に手渡した。「ありがとうございます、助かりました」と笑顔で言われ、少し誇らしい気持ちでその場を離れようとした。だが、背後から再び声がかかった。
「あの、ちょっと…!」さっきの女性が小走りで追いかけてくる。内心、もしかしてお礼に食事でも誘われるのかと淡い期待を抱いた。ところが、「ねぇ!私の1万円札、盗ったでしょ!?ドロボー!返してよ!」
まさかの言葉に耳を疑った。突然泥棒呼ばわりされ、周囲の視線が一気に自分に集まる。「あの人、盗ったらしいわよ」とささやく声が聞こえる。さらに、近くにいたスーツ姿の中年男性までが「君、この子にお金を返しなさい」と詰め寄ってきた。
だが、私は小銭しか拾っていない。紙幣なんて見てもいなければ、手にもしていない。必死で「何かの誤解です!」と弁明するも、誰も信じてくれそうな気配はなかった。
その時、事態を覆す声が上がった。「あなた、嘘ついてますよね?」
声の主は、OL風の落ち着いた雰囲気を持つ若い女性だった。彼女は毅然とした態度で言葉を続けた。「全部見ていました。あなたが落としたのは“財布”じゃなくて“小銭入れ”ですよね?お札が落ちた様子なんて、一切なかったですよ。
」
その瞬間、私を泥棒扱いしていた女性の表情が一変した。「あっ、電車に乗り遅れる!」と意味不明な言い訳を叫び、そのまま走り去っていった。
周囲は騒然となったが、状況は一変。さっきの中年男性も「疑ってしまって申し訳なかった」と頭を下げてくれた。助け舟を出してくれたOL風の女性は、「一応、交番に行っておいた方がいいですよ」と助言をくれた。
その後、交番に行って事情を説明したところ、警察官から意外な話を聞いた。「最近、駅前などで小銭だけをわざと落とし、後から“お札が盗まれた”と騒ぐ詐欺まがいの事例が報告されています」とのことだった。
私はたまたまその手口に巻き込まれそうになっただけだったが、もしあの女性がいなければ、下手をすれば冤罪で大変なことになっていたかもしれない。
善意で手を差し伸べただけの人間が、一瞬で“加害者”にされるなんて、あまりにも理不尽な話だ。
しかし、今回のことで一つ学んだ。困っている人を助けることは大切だが、自分の身を守る術も同時に持っていなければならない時代なのだと。
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