その日は、東京駅から新大阪行きの新幹線に乗る予定だった。少し混雑している時間帯だったため、自由席の窓側を確保するのにかなりの時間を費やし、ようやく席をゲットした男性。しかし、座席に落ち着く暇もなく、数分後に予想外の出来事が待っていました。
「すみません、席を移動していただけませんか？」と声をかけてきたのは、家族連れの女性でした。最初は驚きましたが、理由を聞くと、彼女は家族全員が一緒に座れるように、何とかしてくれと頼んできたのです。その家族は、お父さん、お母さん、小さな子供の3人組。家族みんなで仲良く並んで座りたいというのは理解できますが、問題は、窓側の席がすでに自分のものだったということ。
もちろん、その家族が座りたい気持ちも分かりますが、男性は約30分間も列に並び、やっとの思いで座った席だったため、簡単には譲れませんでした。もし、他の席が空いていれば話は別かもしれませんが、車両はかなり混雑しており、他の席に移動することも難しい状況でした。
しばらく考えた結果、男性は決断します。彼は席を譲ることを選びました。なぜなら、その家族が楽しく一緒に過ごせる時間を提供したいという思いが強く働いたからです。彼の判断は、感情に流されることなく、最終的には家族の幸せを優先させることになったのです。
席を譲った後、その家族からは「ありがとう」と感謝の言葉をもらい、子供はとても喜んでいた様子でした。
しかし、男性自身は窓側の席を失ったものの、心の中では満足感を感じていました。家族が楽しいひとときを過ごせることを後押しした自分を、少し誇りに思っていたからです。
その後、男性は空いている他の席を探しましたが、やはり車内は非常に混雑しており、窓側の席を確保することはできませんでした。
正直に言えば、「指定席を取っていればよかったのでは？」と考えることもありましたが、それでも譲ったことに後悔はありませんでした。家族が一緒に座って楽しそうにしているのを見て、心が温かくなる思いでした。
しばらくして、新幹線が熱海駅に近づいた頃、何とその家族が再び男性の元にやってきました。彼らは、手に東京駅で買ったと思われるお菓子を持って、男性に感謝の気持ちを伝えてくれたのです。「席を譲ってくれて本当にありがとうございました」と、笑顔で渡してくれたお菓子と一緒に、男性の心に感動が広がりました。男性は驚きながらも、深く感謝の気持ちを伝えました。彼が席を譲ったことで、家族全員が楽しい時間を過ごせたことが、何よりの報酬だったからです。
この出来事を振り返ってみると、最初は指定席を取らなかった理由が少し疑問に思えたものの、家族が素敵な時間を過ごしているのを見ると、それが最良の選択だったと思えるようになりました。
最終的に、窓側の席を譲ったことによって、男性は素晴らしい思い出を作ることができました。家族からも感謝され、心温まるひとときを過ごしたことが、何よりの報酬だったと言えるでしょう。
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