自由な発想で日常の風景を大人が考えもつかなかったような角度から子供らしい感性で切り取って可愛らしい文体で伝えてくれますよね。
しかし、今インターネットで大きな話題を呼んでいる作文は少し毛色が異なるようです。
「おとうさんにもらったやさしいうそ」…そんなタイトルの作文、読んだ後、みなさんの子供の作文に対するイメージが変わってしまうかもしれません。
おとうさんにもらったやさしいうそ
作文を書いたのは、茨城県の小学校1年生、佐藤亘紀(こうき)くん。
「おとうさんはちょっととおいところでしごとをすることになったから、おかあさんとげんきにすごしてね。」…それが亘紀くんがお父さんから聞いた最後の言葉でした。
亘紀くんはその時2歳だったので直接言われたことは覚えてはいませんが、その時の動画がしっかりとスマホに記録されているのでいつでも好きな時に聞くことができるのです。
そして、その動画でお父さんの声を聞いた亘紀くんは…涙が止まりません。
思わず、言葉が詰まってしまいます。病で天国に旅立ってしまったお父さんとの別れを綴ったエピソード。
お父さんは息子のために悲しませたくない一心でこんな嘘をついたに違いありません。その時のお父さんの気持ちを想像すると胸が締め付けられそうになります。
しかしその思いを幼いながらにしっかりと受け止め、お父さんのためにだまされているふりを続けよう。そんな風に強く、前向きに生きようとする亘紀くんの健気さ、そして、逞しさに、多くの人々が心を揺さぶられました。
この作文とそれに寄せられた反応は、現代社会における「美談化」の危険性を浮き彫りにしています。確かに、父親の行動は息子に対する愛情から出たものでしょう。しかし、死という重い現実を歪めて伝えることは、長期的に見て子供にどのような影響を与えるのでしょうか。
「優しい嘘」という美名のもとに、私たちは真実から目を背け、都合の良い物語を紡ぎがちです。
しかし、真実に直面すること、そしてそれを受け入れる過程こそが、人の成長を促すのではないでしょうか。幼い心に植え付けられた「嘘」は、後々、不信感や自己否定へと繋がってしまう可能性も孕んでいます。
さらに、この作文が「感動ポルノ」として消費されている現状にも疑問を感じます。「泣ける」「優しい」といった表面的な感情に流され、問題の本質を見ようとしない風潮は、私たちの思考を停止させ、真の共感を阻害します。
大切なのは、感動の先に立ち止まり、何が正しいのか、何が子供にとって最善なのかを冷静に考えることです。安易な美談に酔いしれることなく、現実と向き合うことこそが、子供たちの未来を守ることに繋がるのではないでしょうか。
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