出張帰りの新幹線。私は通路側の席に座り、ぼんやりと窓の外を眺めていた。ふと視線を向けると、通路を挟んだ隣の席に、見覚えのある顔があった。小学校の同級生だった友人だった。長い歳月が流れていたが、その面影は変わらなかった。
ただ、彼は彼女連れのようで、私は話しかけるのをためらっていた。迷惑かもしれないと思い、目を逸らそうとした瞬間、「おっ、私さん!久しぶり!元気?」突然、声をかけられた。
「久しぶり!元気だよ!」自然と笑みがこぼれる。懐かしい気持ちが込み上げ、通路越しに思わず身を乗り出してしまった。
だが、そのとき、彼の隣に座る彼女が、私を鋭く見つめていた。
まるで心を見透かすような、刺すような眼差し。背筋がぞくりとした。
それでも、せっかくの再会。話は自然と昔話に花が咲いた。あの頃の思い出、クラスのこと、先生の話——笑いながら時間は流れていった。
しかし、彼が「ちょっとトイレ」と言って席を立ったその瞬間、空気が一変した。隣から低い声が聞こえる。「ブスのくせに、彼取ろうとしてんじゃねーよ。」
「勘違いすんなよ。彼が優しいから、声かけてやっただけなんだから。」
あまりの言葉に耳を疑った。攻撃的な口調と、まるで別人のような顔つきに、思考が追いつかなかった。
気まずさと動揺で、ただ呆然と座っていた。
そこへ彼が戻ってきた。彼女はすぐさま笑顔を作り、甘えた声で話しかける。「ねぇ、今ね、私さんにあなたのこといろいろ教えてもらってたの。
ねぇ、私さん?」しかし、その目はまったく笑っていなかった。氷のように冷たい視線が、また私を射抜く。
だが、友人は静かに言った。「いや、違うよね。俺、見てたよ。俺の友人に、そういう態度とる女とは、付き合えない。今までも、同じこと何回もしてただろ?もう無理。」
彼女は慌てて言い訳しようとしたが、彼は無言で荷物を持ち、そのまま車両を去って行った。追いかけながら泣く彼女の姿が、ドアの向こうに消えていく。
胸の奥に少しの溜飲が下がった一方で、あの空気、あの緊張感、そしてあの視線を思い出すと、正直、新幹線から逃げ出したくなるほど気まずかった。
まさか、こんな形で再会の幕が下りるとは思いもしなかった。人の本性は、意外な瞬間に見えてくるものなのだと痛感した出来事だった。
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