その日も、いつも通りギリギリだった。
朝は子どもを保育園に送り、
急いで出社して、誰より先に業務を回す。
遅刻もしてない。
仕事も落としてない。
それでも——余裕なんて一切ない。
そんな状態で席に座った瞬間、
机の上に付箋が置かれていた。
何気なく手に取って、固まった。
「日本の首相が言ってるように、馬車馬のように働いてください」
「シングルマザーとか関係ないです」
……は?
一瞬、意味が理解できなかった。
でも理解した瞬間、
一気に血が上がった。
関係ない?
いや、あるに決まってるだろ。
仕事して、子ども育てて、
時間も体力も削って回してる現実を、
全部無視してこの一言?
しかも——
これ、口じゃない。
“書いてある”。
つまり逃げられない証拠。
その瞬間、怒りがスッと冷めた。
ああ、この人、終わったな。
そう思った。
これまでも小言はあった。
遠回しな嫌味もあった。
でも今回は違う。
・差別的発言
・業務外の強制
・しかも書面で残ってる
完全にライン越え。
私はその場でスマホを取り出した。
まず、メモを撮影。
角度も変えて、日付も分かるように。
そしてそのまま、部長に連絡した。
「少しお時間いただけますか」
会議室に呼ばれ、
私はその紙をそのまま机に置いた。
「これ、今朝置かれていたものです」
部長の表情が一瞬で変わった。
「……これは誰が?」
名前を出した瞬間、空気が重くなった。
「これはまずい」
その一言で、全てが決まった。
その日のうちに事情聴取。
翌日には人事も入った。
そして——
あのお局は、態度を一変させた。
「そんなつもりじゃなかった」
「誤解を招く表現だった」
……いやいや。
書いてるよね?ちゃんと。
しかも自分で。
結局、そのメモ一枚で立場は逆転した。
今まで「言う側」だった人が、
完全に「説明する側」になった。
私は何も大きなことはしてない。
ただ——
証拠を、そのまま出しただけ。
我慢し続ける必要なんてなかった。
むしろ今回で確信した。
理不尽って、
“残した側が負ける”。
だから私は、もう引かない。
これはただの反撃じゃない。
ちゃんと働いてる人間が、
当たり前に守られるための一歩だ。
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