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電車の通路をアンパンマンの椅子で塞いで寝ていた女。 私が跨いで通った直後——椅子が倒れた
2026/03/18 告発

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「車両のデッキに、アンパンマンの子供椅子を堂々と出して寝ている女がいた。」

最初に見た瞬間、思わず足が止まった。

電車の車両と車両の間、あのデッキのスペース。
人が必ず通る通路の真ん中に、アンパンマンの小さな子供椅子が置かれていた。

しかもその上に、女性が座り込んでいる。

ドアにもたれ、目を閉じている。
どう見ても――寝ている。

デッキは通路だ。
乗客はみんな、ここを通って次の車両へ移動する。

なのに女性は、堂々とその真ん中に椅子を出していた。

通る人はみんな、女性の横を無理やり避けて通っている。

私は次の車両へ移動しようとしていた。

足を止め、軽く声をかけた。

「すみません」

女性のまぶたがゆっくり開いた。

そして私を見た。

その目は、明らかに不機嫌だった。


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何も言わない。ただ睨む。

私はもう一度言った。

「通らせてもらっていいですか」

すると女性は、露骨にため息をついた。

「はぁ……」

そして小さく、何かをぶつぶつ言った。

日本語ではない。
舌打ちのような音が混じっている。

だが椅子も体も、ほとんど動かない。

ほんの少し背中を浮かせただけだった。

これでは通れない。

後ろを見ると、いつの間にか人が数人立ち止まっていた。
スーツ姿の男性、キャリーケースを持った女性、年配の夫婦。

みんな困った顔をしている。

私は仕方なく、女性と椅子の隙間を見て、足を跨ぐようにして通ることにした。

正直かなり不安定だった。

椅子は子供用で低いし、女性はドアにもたれている。

電車は走っている。

それでも通るしかない。

私は慎重に足を上げ、その横を跨いでデッキを抜けた。

背後からまた、小さく声が聞こえた。


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ぶつぶつ。

明らかに文句を言っている。

少しして、私は同じデッキをもう一度通ることになった。

女性は――

まだ同じ姿勢だった。

アンパンマンの椅子に座り、ドアにもたれている。

後ろには、さっきよりさらに人が増えていた。

誰も強く言えないまま、妙な空気だけが漂っている。

その時だった。

電車が、少し揺れた。

ほんの小さな揺れだった。

だが次の瞬間。

「ガタン!」

大きな音がデッキに響いた。

アンパンマンの椅子が横に倒れた。

女性はドアにもたれていた体の支えを失い、そのまま前へ崩れた。

ドサッ。

デッキの真ん中で、完全にうつ伏せになった。

一瞬、空気が止まった。

誰も声を出さない。

ただ数秒の沈黙。

その沈黙を破ったのは、後ろにいた中年の男性だった。

中国人らしい男性だった。

彼は女性を見下ろし、はっきりと中国語で言った。

「ここは寝る場所じゃない!」

声は思ったより大きく、デッキにいた人たちが一斉に振り向いた。

女性は慌てて顔を上げた。

顔が真っ赤になっている。

一瞬だけ、その男性を睨み返した。

そして何か言い返したようだった。

早口の中国語だったが、私は内容までは聞き取れなかった。

ただ、声は明らかに苛立っていた。

だが周りの空気は、もう完全に変わっていた。

さっきまで何も言えずにいた乗客たちが、静かにその女性を見ている。

逃げ場のない沈黙だった。

女性は舌打ちのような音を立てると、倒れたアンパンマンの椅子を乱暴に拾い上げた。


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その黄色い顔が、デッキのライトの下でやけに目立っていた。

そして周りを見ないまま、早足で歩き出した。

誰も止めない。
誰も声をかけない。

ただ、道だけが静かに開く。

女性はそのまま隣の車両へ消えた。

しばらくしても、戻ってくることはなかった。

その時ふと気づいた。

——まだ、次の駅には着いていない。

つまり彼女は、降りる駅でもないのに
そのままどこかへ逃げて行ったらしい。

デッキには、さっきまでの騒ぎが嘘みたいに静かな空気が戻っていた。

そして誰かが小さく言った。

「最初から、そこに座らなければよかったのにね。」

その言葉に、何人かが小さく笑った。

アンパンマンの椅子だけが、妙に印象に残った出来事だった。

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