「お前のマンション、親にプレゼントするから。嫌なら離婚だ!」
突然の電話越しに、夫・ひろのりから突きつけられた理不尽な要求。結婚して8年、私たち夫婦は共に特別職国家公務員(自衛官)として全国を転々としており、一緒に暮らしたことは一度もありませんでした。そんな私たちに、ある日ひろのりの両親から「熊本に旅行に行くから、お前のマンションに泊めてくれ」と連絡があったのが全ての始まりでした。
私は義父母に少しでも故郷の良さを知ってもらおうと、有給を使って丸一日観光案内をしました。しかし、義父母は熊本を気に入り、あろうことか「ここに住む」と言い出し、月々の賃料を払うことも拒否。挙句の果てには、私がいない間に洗濯機を勝手に操作して水漏れ事故を起こし、近所から騒音苦情を受けるなど、マンションは無法地帯と化しました。
耐えかねて「賃料を払ってください」と言うと、義父は激怒。「身内に金を要求するのか!」と怒鳴り散らし、挙げ句の果てに、ひろのりと結託して「俺の親にマンションを渡せ。
拒むなら離婚だ」という冒険に出たのです。
私は即決しました。 「わかった。離婚しましょう」
その日のうちに離婚届を書き、速達で叩きつけました。自分が思っていた通りの従順な妻ではなかったことにひろのりは激怒しましたが、後の祭りです。それどころか、彼は人事を担当する立場を悪用し、私に福岡への転勤命令を出させるという姑息な嫌がらせまでしてきました。
しかし、私は屈しませんでした。元夫の嫌がらせなど、私の人生を阻む壁にはなりませんでした。
福岡へ移り住んだ私は、ある大きな目標のために猛勉強を開始しました。それは、自衛隊のトップクラスの指揮官を養成する「指揮幕僚課程」への合格です。昇進し、元夫より上の階級になって見返したい――。その一心で、私は超難関試験を一発合格で突破しました。
そして1年4ヶ月後。私は熊本へ部隊指揮官として着任。奇しくもそこには、人事担当として熊本に赴任していた元夫がいました。今や私の階級の方が上です。
迎えた駐屯地開放の日。私は教育訓練担当として、来場者向けの体験ブースを運営していました。そこに、なんと元夫と元義父母がやってきたのです。
「ここぞチャンス」とばかりに、私は呼び込み役として彼らをブースに引き込みました。
「お兄さん、お父さんも体験していきませんか?」
私は、以前まで私を見下していた元夫に、泥まみれになる鉄のヘルメットを被せました。
そして、他の隊員と一緒に「報復前進」の訓練に参加させたのです。
「一番、動作が遅い! 全然声が出ていない! やり直し!」
炎天下、現役自衛官であるはずの元夫が、女性指揮官である私の怒号に逆らえず、地面を這いずり回ります。周囲の見学者たちは、一人の男性自衛官を駒のように操る私の姿を見て、何かを察したのか痛快そうに笑っていました。
特に、「我が息子はエリートだ」と信じ込んでいた元義父母の顔は、驚きと悔しさで真っ青でした。彼らは、目の前の女性が「自分たちが追い出した、格下の嫁」であることに気づき、言葉を失っていました。
その後、元義父母はマンションを引き払い、元夫も私の顔を見るたびに悔しそうな表情を浮かべています。階級という目に見える「身分」の差が、かつて私を見下していた彼らにとって何よりの罰になったようです。
復讐はまだ序の口。階級が上の私に対し、今では顔を合わせるたびに敬礼せざるを得ない元夫の引きつった顔を見ることが、私の今の密かな楽しみです。
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