私の名は理子。昨年結婚したばかりの新婚生活は、夫との穏やかな愛情に満ちていた。私は以前勤めていた会社を辞め、かねてからの夢であった「寿司職人」への道を歩み始めた。自宅近くの高級寿司店で修行を積む日々は、決して楽ではないが、大将の温かな指導のもと、私は充実した毎日を送っていた。
しかし、私の平穏な生活を脅かす存在が一人いた。義母である。彼女は、私が初めて挨拶に行ったその日から、理由もなく私を毛嫌いした。「貧相な体ね」「どこの大学を出ているの?」と、会うたびに浴びせられる嫌味。私が仕事を頑張れば「暇な人間が店のお手伝いなんて」とこき下ろし、夫がいない隙を狙って我が家に押しかけては、精神的な攻撃を繰り返した。
そんなある日、私が修行する寿司店に、五十名という大人数での貸切予約が入った。大将は鮮度を重んじる職人気質ゆえ、普段は大人数の予約を避けている。しかし、「どうしても君の店で食事がしたい」という常連からの強い要望に、大将は新しい挑戦として今回だけ特別に受けることにした。
当日。予約の時間になると、店の扉が開かれ、五十名の客が一斉に入ってきた。その先頭にいたのは、高笑いする義母の姿だった。
「さあ、みんなお腹いっぱい食べてちょうだい! 高級なネタを好きなだけ注文していいからね!」
義母はまるで自分がこの店の主であるかのように振る舞い、集めた友人たちに豪遊を勧めた。高級なネタと銘酒が次々と注文されていく。あまりの景気の良さに、私は嫌な予感がして思わず義母を諌めた。
「お母さん、そんなに飲み食いしたら金額が大変なことになりますよ。どなたか払ってくださるのですか?」
すると義母は、周囲に聞こえるような大声で私を嘲笑った。
「あんた、頭が悪いんじゃないの? あんたのお店なんだから、あんたが払えばいいでしょう! 私は無料で飲み食いする権利があるのよ!」
義母は、私がお金を出してこの店を経営していると勘違いしていたのだ。いや、正確には「私が経営していると吹聴し、私を恥かかせ、店を潰すために客を呼び寄せた」のだ。
大騒ぎの宴が終わり、客が帰ろうとしたその時、大将が毅然として声を上げた。
「お客様、お会計は二百万円でございます」
その言葉に義母はニヤリと笑い、私を指差した。「ほら、この嫁に払わせなさい!」と。しかし、私は冷静に告げた。
「お母さん、誤解しています。ここは私のお店ではありませんし、私はただの修行の身です。お会計はあなたのご負担ですよ」
店は静まり返り、集められた客たちは「家族のいざこざに巻き込まれた」と顔色を変えた。義母は顔を真っ赤にして逆上したが、もはや手遅れだった。警察を呼ぶと告げたことで、事の重大さに気づいた義母は、連行される直前まで喚き散らしていた。
結局、義母が招いた客たちは「自分が払うつもりはない」と支払いを拒否。全額を支払う羽目になった義母は、親族一同からも激しく糾弾されることとなった。実の息子である夫からも「母さんとはもう縁を切る」と絶縁を言い渡され、彼女は今、惨めなパート生活を送っているという。
今回の件で、私は自身の夢が確固たるものになったことを確信した。大将の計らいもあり、私は自身のプロデュースする店を持つことが決定した。もう、誰かに踏み躙られる日々はない。応援してくれる人たちと共に、私は自分の力で新しい未来を切り拓いていく。
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