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「30万円ずつ5日以内に送れ」警察に言うなと書いた脅迫状がポストに入っていたので、現金ではなく証拠袋に入れて警察へ持ち込んだ話
2026/06/21 告発

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ポストを開けた瞬間、白い封筒が一枚だけ入っていた。

差出人はない。

宛名も妙に雑。

広告でも請求書でもない。

こういう封筒は、だいたい面倒くさい。

私は玄関で靴も脱がずに、その場で封を切った。

中から出てきたのは、ワープロ打ちの紙一枚。

そして、一行目を読んだ瞬間、思わず笑ってしまった。

「下記住所に現金八十万円ずつ普通郵便で送れ」

いや、待て。

八十万円。

しかも「ずつ」。

誰と誰が、何回送る前提なのか。

さらに普通郵便。

現金を。

普通郵便で。

この時点で、脅迫状というより、犯罪初心者の自由研究だった。

でも、笑ったのは最初の数秒だけだった。

読み進めるにつれ、背中にじわじわ嫌な汗がにじんだ。

「期限は当書面到着後五日以内」

「悪事によって搾取した金の一部だ」

「支払えば公表しない」

「警察へ密告した場合、期限までに支払わなかった場合、容赦しない」

文章だけは、やけに偉そうだった。

誰かを裁く立場にでも立ったつもりなのか。

知らない人間から突然、悪事だの搾取だの言われ、八十万円を要求される。


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しかも、こちらには身に覚えがない。

私は紙を持ったまま、玄関でしばらく固まった。

外は普通の午後だった。

近所の子どもの声がして、どこかで犬が吠えている。

そんな平和な住宅街の空気の中で、私だけが急に昭和のサスペンスに放り込まれていた。

「脅迫状がきた、なう」

思わず口に出した。

いや、笑ってる場合ではない。

でも、あまりに雑すぎて、脳が恐怖より先にツッコミを始めてしまう。

普通郵便で八十万円を送れ?

現金書留ですらなく?

そもそも普通郵便で現金を送る発想が、もう警察に自己紹介しているようなものではないか。

私はリビングに入り、テーブルの上に紙を置いた。

何度も読み返した。

怒りが遅れてやってきた。

なぜ私が、こんなものを受け取らなければならないのか。

なぜ見ず知らずの誰かに、勝手に悪人扱いされなければならないのか。

なぜ八十万円なのか。

五十万でも百万円でもなく、八十万円。

中途半端に現実味を出そうとしたのか。

それとも、犯人の生活費の計算がそのくらいだったのか。


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「ずつ」と書いてあるあたり、欲だけは大きい。

文章の品格は小さい。

私はすぐに写真を撮った。

封筒。

紙面。

到着した時間。

触った場所もなるべく覚えておく。

こういう時、感情で破り捨てたら負けだ。

腹は立つ。

ものすごく腹は立つ。

でも、証拠は証拠。

相手が「容赦しない」と言うなら、こちらも容赦なく記録するだけだ。

警察へ密告した場合、と書いてある。

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