「毎夜、朝までお経の声がうるさい!!」
マンション入口に貼られた紙を見た瞬間、私は足を止めた。
先月、母が亡くなり、我が家には小さな仏壇を置いたばかりだった。
毎朝7時ごろ、5分ほど手を合わせる。
そのことを知っている住人もいる。
案の定、エレベーターで一緒になった隣人が言った。
「夜中のお経、そちらじゃないんですか?」
「違います。夜は読んでいません」
しかし相手は納得していない顔だった。
その日の夜、私はテレビを消して待った。
午前1時03分。
低い男性の声が、壁の奥から聞こえ始めた。
同じ言葉を繰り返す、確かにお経のような音だった。
私はスマートフォンで録音し、廊下へ出た。
自宅前より、エレベーター付近のほうが大きい。
1階ずつ確認すると、7階の非常階段前で最もはっきり聞こえた。
時刻は午前2時17分。
音は廊下の突き当たりにある701号室付近から響いていた。
だが701号室の住人は、2週間前に入院したと聞いている。
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