「中卒の旦那の子なんて、もう孫じゃないわよ。」
正直、耳を疑った。しかもその言葉は、まだ幼い娘の目の前で母の口から平然と放たれたのだ。
その瞬間、頭の中が真っ白になった。怒りよりも先に、胸に込み上げてきたのは悔しさだった。
――何より、娘にこの言葉を聞かせてしまったことが。
私は娘を抱き上げて立ち上がり、静かに言った。
「もういい。こんな親、こっちから縁を切る。」
こうして私たち家族と母の関係は、ほぼ絶縁状態になった。だが――それから十年後。
母は突然、私の娘の前で土下座することになる。
人生とは、本当に何が起きるか分からない。
――――――――――
私の名前は直美、四十歳。自分で言うのもなんだけど、明るい性格が取り柄だ。
夫からは「一人で二倍うるさい」と言われるし、娘からも「お母さんが静かだと体調悪いの?」と心配される。
まあ、つまりよくしゃべるタイプだ。
でもおかげで我が家はいつも賑やかだ。
夫は中卒。でも真面目で、誰よりも家族思いの人だ。
娘の美希も、そんな父親が大好き。
平凡だけど、温かい家庭だと思う。
ただ一つだけ問題があるとすれば――
私の母だった。
母はいわゆるエリート。有名大学を卒業し、若い頃は弁護士として活躍していた。
その影響か、学歴へのこだわりはとにかく強い。
子供の頃から、私と妹にはこう言っていた。
「あなたたちはエリートになるのよ。」「絶対に有名大学に行きなさい。」
それこそ耳にタコができるほど聞かされた。
母自身、完璧な人生を歩んできたつもりだったのだろう。
だが父とは価値観の違いで離婚。シングルマザーとして私たちを育てることになった。
それが母にとって、大きな挫折だったのかもしれない。
周囲の家庭と自分を比べ、「幸せな家庭」をやたらアピールするようになった。
そして何より――
孫への執着が異常だった。
「早く孫の顔を見せて。」
それが母の口癖だった。
私はそのプレッシャーにうんざりしていたが、ある日、転機が訪れた。
付き合っていた慎吾からプロポーズされたのだ。
私は迷わず受けた。
しかし母に紹介すると、案の定だった。
「中卒ですって?」
露骨に嫌な顔をされた。
慎吾は中学の頃、母親が癌になり、高校へ進学できなかった。働きながら看病していたのだ。
その話を聞いた父は、優しく言った。
「立派じゃないか。」
しかし母は違った。
「もっといい相手いなかったの?」
さすがにカチンときた。
「私は学歴と結婚するんじゃないの。
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