私は「給与・やりがい・出世」を志向するいわゆる意識高い激務企業で働いてから、「ワークライフバランスこそ至高」とするホワイト企業へ転職しました。その後は独立し、今度はチームの給与やワークライフバランスを決める立場にいます。
その目まぐるしいキャリアの中で痛感したのは、いかに「会社員が口に出す不満」と、「本当に欲しかったもの」が違うか、というものでした。といっても、社員が嘘をつくわけではありません。社員自身も本当は仕事で何が欲しいか、自分の望みに気づいていないのです。
マイナビウーマンの調査で「いま仕事で直面している『不安や悩み』で一番近いものは?」と質問したところ、3割の方が「給与や評価」と答えました。よくSNSでは、「年収600万円くれ、いや1,000万円。嘘です、5,000兆円ほしい!」という声が聞こえますし、私だって5,000兆円、欲しいです。
ですが、現場で悩んでいる人の声はもっと、ずっと深刻です。
たとえば、30代の平均年収は444万円 。概算した手取り は346万円です。手取りが月額28万円、そこから都内に住めば家賃は8万円程度と考えると、残り20万円。暮らしていくことはできますが、いざというときの貯えを考えると不安が残りますし、海外旅行のような贅沢は結構しんどくなります。
これが平均なわけですから、さらに低い人がざらにいるわけで。私の知人に、いわゆるワーキングプアの人がいます。激務で心を壊し、フルタイムで働けなくなった彼女は、現在アルバイトの翻訳業で生計を立てています。とはいえ、稼げるのは月に10万円が限界。
実家から出ることもできず「子供部屋おばさん」になるのが怖いと言います。
こんな風に、正規で働けない人はたくさんいます。30代は4割が非正規 。中には望んで非正規になっている人もいますが、「正規になりたいけれど、チャンスがなかった」人もたくさんいるわけです。そのうえ、フルタイムで働いていても月給が低すぎて暮らしがしんどく、特に昇給も見込めないとなると「このままでいいのか」と不安になるのは、当然のことといえるでしょう。
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