友人の結婚式に参加することになった私は、期待と少しの緊張を胸に式場へ向かっていた。新婦とは長い付き合いで、彼女がどれほどこの日を楽しみにしていたかを知っている。そして新郎についても、彼が消防士として働いていることを以前から聞いていた。しかし、この結婚式が誰も予想できなかった展開を迎えることになるとは、そのときの私は全く想像していなかった。
式場に着くと、華やかな雰囲気が漂っていた。しかし、新郎側の席に空席が目立つことに、私は少し違和感を覚えた。結婚式という人生の大イベントに、どうしてこんなに空席が多いのか。その疑問は、新郎新婦の入場の瞬間に一気に解けることとなる。
新婦は真っ白なウェディングドレスに身を包み、美しく輝いていた。
しかし、その隣に現れた新郎は、驚くべき姿だった。彼は式典用のスーツではなく、まるで災害現場に直行できるかのような作業着を着ていたのだ。会場内はざわつき、一瞬にして異様な空気が漂った。
その直後、マイクを手にした新郎が、静かにしかし力強く語り始めた。「皆さま、本日はお忙しい中、私たちの結婚式にご出席いただき、誠にありがとうございます。しかし、先ほどお知らせした通り、遠方で大規模な災害が発生しており、私はこの場を離れなければなりません。仲間たちはすでに現場に向かっており、私もすぐに駆けつける必要があります。」
その言葉に、会場はしんと静まり返った。新郎はさらに続けた。「申し訳ございませんが、集合時間は30分後です。私はこれで失礼させていただきますが、妻も私の仕事を理解してくれています。彼女の寛容さと皆さまのご理解に感謝します。」
新婦もまた、その場で冷静にマイクを受け取り、新郎の決断を支持する言葉を述べた。
「彼の仕事は命を守ることです。彼が現場に行くことは、私たちの幸せと同じくらい大切なことです。皆さんもどうか、この状況をご理解ください。そして、この後の食事会を楽しんでいただければと思います。」
その場の雰囲気は、何とも言えない感動に包まれ、参列者たちは拍手で新郎を送り出した。彼が去る際、誰もがその使命感と新婦の深い愛情に胸を打たれ、心からの敬意を表した。
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