今日、子どもが小学校から帰ってきたとき、私はすぐに違和感に気づいた。
玄関のドアが開く音。
ランドセルを下ろす音。
いつもなら「ただいま!」と少しうるさいくらいの声がするのに、その日は妙に静かだった。
靴を脱ぐ音まで弱い。
私はキッチンから顔を出した。
「おかえり。どうしたの?」
子どもは目を合わせなかった。
「別に」
その“別に”が、全然別にではなかった。
手に持っていた水筒ケースが、いつもより汚れて見えた。
最初は運動場で転んだのかと思った。
でも、近づいた瞬間、胸の奥がざわっとした。
水筒の口まわりに、細かい砂がついていた。
ケースにも砂。
フタの溝にも砂。
ただ外側が汚れた、という感じではない。
誰かが意図的にかけたような汚れ方だった。
私は手を止めた。
「これ、どうしたの?」
子どもは黙った。
その沈黙だけで、もう答えの半分は出ていた。
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