午前5時30分のアラームが鳴る前に、ゆみはすでに目を覚ましていた。
それは10年間、身体に染みついた習慣だった。薄暗い部屋の中で布団をそっと抜け出し、床に足を下ろす。廊下に出る時も、足音を立てないように気をつけた。義母の静子が、少しでも長く眠れるようにするためだった。
静子の部屋の前で、ゆみは一度だけ深く息を吸った。それから障子を静かに開けた。
「静子さん、おはようございます」
ベッドに横たわった静子は、薄く目を開けてゆみを見た。もう言葉はほとんど出せなかった。それでも、その目だけはいつも何かを伝えていた。
ゆみはその眼差しを見ただけで、静子が何を求めているのか分かった。
おむつを確認すると、やはり濡れていた。ゆみは温かいお湯を洗面器に汲み、タオルを絞って、静子の身体を丁寧に拭いた。肌がこすれて痛まないように、力を入れすぎず、時間をかけて動かす。
床ずれができないように、決まった時間に姿勢を変えることも欠かせなかった。背中に手を添え、身体を少し横に向ける。肩や腰を支えながら、静子が苦しくない姿勢を探す。最後に手足をゆっくり揉み、固まった関節を少しずつ動かした。
顔を洗わせた後、朝の薬を用意した。
血圧の薬、糖尿病の薬、消化剤、ほかにもいくつかの錠剤があり、全部で7種類あった。ゆみは小皿に薬を並べ、水を少しずつ口元へ運んだ。
静子がむせると、ゆみはすぐに手を止めた。
「大丈夫ですよ。ゆっくりでいいですからね」
背中をさすりながら、呼吸が落ち着くまで待つ。焦らせてはいけなかった。飲み込む力が弱くなった静子にとって、薬を飲むだけでも大仕事だった。
午前7時になると、ゆみは静子を車椅子に乗せ、居間へ移動させた。テレビを小さな音でつけ、膝掛けをかける。
「静子さん、ちょっと市場へ行ってきますね。30分で戻ります」
静子はわずかにまばたきをした。それが返事だった。
市場では、静子の食事に使う材料を選ぶ。特にお粥に入れる魚は、骨のない柔らかいものを探さなければならなかった。店のおばちゃんも、もうゆみのことをよく知っていた。
「ゆみちゃん、今日もお母さんのお粥かい。このカレイはどう? 身が柔らかいよ」
「ありがとうございます。これにします」
家に戻ると、すぐに台所に立った。魚をきれいに下処理し、骨をすべて取り除く。
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次のページ引用元:https://www.youtube.com/watch?v=_kD5a240TPc,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]