「……これ、誰がやったの?」
朝、出勤してロッカーを開けた瞬間。
私は言葉を失いました。
そこに入っていたはずの仕事着が、無残な姿になっていたのです。
保育園で毎日着ている大切なエプロン。
子どもたちと向き合うために選んだ服でした。
それなのに、胸元や前の部分には大きな切れ目。
さらに油性ペンのようなもので、意味不明な落書きまでされていました。
一瞬、頭が真っ白になりました。
「まさか……職場でこんなことが?」
私は保育士として働いて8年になります。
毎日、朝早くから出勤して、
子どもたちの体調を確認し、
保護者の方と話をして、
一人ひとりの成長を見守ってきました。
もちろん、職場にはいろいろな考え方の人がいます。
意見がぶつかることもありました。
でも、まさか仕事道具を壊されるとは思っていませんでした。
私は怒鳴りませんでした。
その場で誰かを責めることもしませんでした。
ただ、静かにスマホを取り出しました。
そして、制服の状態を写真に残しました。
破れた場所。
落書きの内容。
ロッカーの状況。
全部記録しました。
「感情で動いたら、相手の思うつぼかもしれない」
そう思ったからです。
すると、近くにいた同僚が私の様子に気づきました。
「え……それ、どうしたの?」
私は写真を見せました。
すると、その場にいた先生たちの表情が変わりました。
「誰がこんなことを……」
「子どもたちがいる場所で、こんなことするなんて」
職員室には少しずつ緊張した空気が広がりました。
私は園長先生に報告しました。
「犯人を責めたいわけではありません」
「ただ、同じことが繰り返されないように確認したいです」
園長先生は黙って写真を確認していました。
そして、あることを聞かれました。
「昨日、最後にロッカー付近にいた人は分かりますか?」
私は記憶をたどりました。
前日の退勤時間。
職員室での会話。
ロッカー前ですれ違った人物。
実は、その時少し違和感がありました。
普段あまり話さない同僚が、私の制服を見ていたこと。
そして、
「そのエプロン、まだ使ってるんだ」
と意味深な言葉を言われたこと。
私はその時、気に留めませんでした。
でも、今思えば少し不自然でした。
園長先生は、さらに確認を進めました。
ロッカー周辺の状況。
職員の出入り。
そして、保管されていた記録。
私はただ静かに待ちました。
怒りをぶつけるより、
事実を確認することが一番大切だと思ったからです。
数日後。
職員全員が集められました。
園長先生が机の上に置いたのは、
私が提出した写真と、ある確認結果でした。
「この件について、説明があります」
その一言で、
職員室の空気が一気に変わりました。
私は何も言わず、ただその場を見つめていました。
すると、ある先生の顔色が少しずつ変わり始めたのです……(続)
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