「本当に生意気だな。高卒のくせに」
その一言を聞いた瞬間、俺は自分の耳を疑った。
目の前に立つのは、数か月前に他社から異動してきた新部長、盛田。
彼は俺が十二年間、誠実に積み重ねてきた仕事のすべてを、学歴という一言で踏みにじった。
俺の名前は吉川。三十歳。
高校卒業後すぐにこの会社に入り、営業一筋で十二年働いてきた。
大学へ進まなかったのは、早く自立したかったからだ。家庭に温もりはなく、頼れる場所はなかった。
だからこそ、仕事だけは誰よりも真剣に向き合ってきた自負がある。
転機となったのは、ある日偶然出会った飯塚社長との縁だった。
日々の誠実な対応を評価され、結果として五億円規模の大型商談を任されることになった。
社長から直々に激励を受け、営業部全体も沸いた。
だが、それを快く思わない者が一人いた。盛田部長だ。
「高卒にこんな商談は分不相応だ」
そう言って、彼は何度も担当を代われと迫ってきた。
だが、先方は俺を指名している。
その事実を盾に拒み続けた結果、ついにその夜、事件は起きた。
「たった五億の商談を取っただけで偉そうに意見するなら、クビだ」
感情をむき出しにした盛田の暴言に、俺の中で何かが切れた。
これ以上、この男の下で働く理由はない。
「……分かりました。では、辞めます」
そう告げ、俺はその場で退職を決めた。
翌日。
商談当日。
盛田は、俺の代わりに担当として現れた。
俺が残したパソコンのデータを使い、さも自分の成果であるかのように臨んだらしい。
だが、会議室で資料を開いた瞬間、彼の顔色は一変した。
配布用の簡易資料しかない。
肝心の進行用データや数値根拠は存在しない。
ページをめくる手が震え、視線が泳ぐ。
盛田はその場でガタガタと震え出したという。
当然だ。
本当に必要な資料は、正式な申請を通したUSBメモリの中にある。
それは、今も俺の手元にある。
その後、盛田のパワハラ行為、虚偽報告、越権行為が次々と明るみに出た。
結果、彼は懲戒解雇。
俺は社長から正式に謝罪を受け、商談も改めて再開されることになった。
学歴ではなく、積み重ねてきた誠実さこそが信頼を生む。
十二年間の努力は、決して無駄ではなかった。
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