Aママの自信満々な「主婦アピール」は、私たちママ友の間でも有名だった。
彼女が語る持論はいつも極端で、聞く側を疲れさせるほどだ。
「妻に働かせるなんて、旦那に愛されていない証拠! 愛されてる主婦の私ってステキでしょ☆」
「共働きの子は学童に通わされて可哀想。うちのムチュコたんは、保育園から帰ったら私とずーっとベッタリなの☆」
「旦那様を癒すのが主婦の務め。だから私がエステに通って、高い化粧品を使って美しくなるのは義務なのよ☆」
さらに料理は「お高いスーパーで吟味した食材を手作りするのが当たり前、惣菜なんて論外!」と笑い、家計も「財布の管理は主婦の権利、旦那が口出ししたら離婚をちらつかせて撃退☆」と豪語していた。
その姿は自信に満ちていたが、共働きで家事と仕事を両立している私からすれば、彼女の言葉は常に“sage”として突き刺さった。
もちろん普通の専業主婦がそうではないと分かっている。それでも彼女のアピールが強すぎて、「主婦」という言葉に条件反射的に顔が歪んでしまう時さえあった。
そして、そんな彼女の語りの中で最も衝撃だったのが「賢いお金のやりくり」というテーマだった。
興味本位で耳を傾けた私に、Aママは誇らしげにこう言った。
「税金や保育料なんて払わなくていいんだよーw 市役所なんて市民に奉仕して当然だから、いちいちうるさく言わないの。保育料払わなくても子どもは見てくれるし、浮いたお金は全部自分たちに投資できるの☆」
その瞬間、背筋に冷たいものが走った。A家は自営業で、旦那さんの収入は月20万円程度と聞いていた。どうやって贅沢な生活を維持しているのか不思議だったが、なるほど、支払うべきものを払っていないのなら説明がつく。だが、当然それは犯罪すれすれの行為だ。
やがて彼女の身勝手な行動は周囲からも距離を置かれるようになった。ランチ会への誘いも減り、ママ友グループの中で浮いていったが、Aママ本人は意に介さず「うちのステキチュプライフ」を満喫しているつもりだった。
しかし、転機は突然訪れた。ある日、スネーク奥様から耳にした噂は衝撃的だった。
「Aさんの家、大喧嘩して警察沙汰寸前だったらしいよ。原因は差押えだって。」
なんと、税務署や市役所から何度も督促を無視し続けた結果、売上金や預金が差し押さえられたのだという。その額は数百万円単位。さらに、延滞税はまるでサラ金並みの高利で膨れ上がり、家庭を直撃した。今までAママの言葉を信じて「妻がしっかり家計を管理している」と思っていた旦那さんは大激怒。子どもは一時的に旦那さんの実家へ避難する事態にまで発展したという。
しかも追い打ちをかけるように、差押えの噂は取引先にまで広まり、旦那さんは複数の元請けから切られてしまった。家庭も仕事も、一瞬にして崩壊寸前だったのだ。
結局、夫婦は話し合いの末に再構築を選んだが、Aママの生活は一変した。家計の財布は夫に取り上げられ、彼女はパートに出されることに。レジ打ちで一日を過ごし、今まで自慢していた高級コスメも買えず、100円ショップで化粧品を選ぶ姿が目撃されている。
しかも今まで旦那を盾にかわしていた姑からの干渉も、防波堤を失ったことで直接降りかかるようになった。
かつて「主婦の義務」として掲げていたエステも、美容も、ロハスな食生活も、すべて過去のものになった。浮いたお金を「自分への投資」に回していたはずの彼女の夢は、現実の借金返済という重荷にかき消されてしまったのだ。
今、Aママの姿を思い出すと、少し同情の念が湧く。しかし同時に、「自業自得」という言葉が最もふさわしい。払うべきものを払わず、周囲を見下して築き上げた虚像のチュプライフは、こうして音を立てて崩れ去ったのである。
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