ある日、職場の同僚(男性)の結婚式に参加した。式場は華やかで、ゲストたちの笑顔が溢れる中、いよいよ新郎新婦が登場する時間が訪れた。音楽が鳴り響き、会場の照明が落ち、次の瞬間、ドアが開いて新郎新婦が手を取り合いながら歩いてきた。
その瞬間、親族席に座っていた子供(おそらく姪っ子)が、周囲の静けさを打破するように大きな声で言った。「あれ?おじちゃん、髪の毛あるよ?どうしたの?」
会場は一瞬静まり返り、私も驚きとともにその言葉が耳に入った。実は新郎、26歳にして若干の薄毛が進行しており、何年も前からある有名なヘアサロンで髪の毛の手入れを受け、去年からはヅラをつけていることを知っている者は少なくなかった。しかし、姪っ子は、遠方に住んでいるため久しぶりに顔を見たらしく、薄毛だった新郎の姿しか覚えていない様子だった。
新郎が髪の毛を手入れしていたことを知っているのは、職場の同僚たちや、親しい友人たちだけだ。
そのため、姪っ子の無邪気な質問が、予期せぬタイミングで披露されてしまったことに、会場の空気が一気に緊張した。
周りの同僚たちは、その予想外の発言に肩を震わせながら笑いを堪えていたが、新郎の親族席では微妙な雰囲気が漂っていた。特に新婦側の友人や親戚はこの事実を知らなかったため、少しざわつきが感じられた。新婦の親戚たちの間でも、静かな会話が交わされ、なんとなく「何か変だな」という空気が広がっていた。
その後、二人の馴れ初めが紹介され、スクリーンに過去の二人の写真が映し出された。写真の中には、新郎が髪の毛のない若い頃の姿も映っており、その場にいた姪っ子が再び口を開いた。「ほら、ママ、あれ、あの写真のおじさん、帽子かぶってるけど、髪の毛なかったよね?」
新婦側の親戚たちや友人たちもこの事実に気づいたのか、少しずつ忍び笑いが聞こえ始め、会場に微妙な笑いの雰囲気が広がった。新郎は明らかに機嫌を損ね、表情も険しくなった。
その横で新婦は顔を伏せ、恥ずかしさを感じていたのだろう。
姪っ子が思いもよらぬタイミングで発した言葉が、結婚式の空気を変えてしまった。新郎の表情は明らかに落ち込んでいて、これ以上のやり取りがない方がいいと思ったのか、姪っ子はすぐに親に連れられて退場していった。
その後、姪っ子が再び席に戻ってきたが、恐らく親から説教を受けたのだろう。会場の雰囲気は少し落ち着きを取り戻したが、今後の式の進行には少なからず影響を与えていた。
そして、キャンドルサービスの時間がやってきた。新郎が私の近くに来たとき、姪っ子がじっと新郎の頭を見つめながら再び言った。「おじさん、髪の毛、誰からもらったの?」
会場内の空気は再びピリつき、周囲の人々も何とも言えない表情を浮かべていた。新郎の顔はさらに硬くなり、少し遠ざかろうとしたが、姪っ子の言葉がまたもや結婚式の記憶に残る瞬間を作ってしまった。
結婚式という幸せなイベントで、予期しない形で新郎が恥ずかしい思いをすることになってしまった。新郎にとって、この日は結婚式という大切な日であると同時に、ある意味で「新しい髪の毛」を披露する日となり、少しばかり不本意だったかもしれない。
しかし、結婚式はどんな形であれ、一生に一度の思い出に残るイベントだ。そして、少なくとも姪っ子の無邪気な質問が、結婚式をより一層印象深いものにしたことは間違いない。
新郎にとっては恥ずかしい一日だったかもしれないが、この日が新婦と共に歩む未来のスタートだということを忘れずに、これからの新しい生活を二人で大切にしていってほしいと思う。
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