1987年から1991年までの間に登場したホンダ・3代目プレリュードは、そのデザインと技術で多くの人々を驚かせました。特に注目されるのが、そのボンネットの低さです。プレリュードは、2代目からのキープ・コンセプトを継承しつつも、まったく新しいデザインを取り入れました。その低く美しいボンネットは、フェラーリ308GTBと同じく、エンジンが内部に存在しているにもかかわらず、まるでミッドシップのように感じさせるものでした。この革新的なデザインは、当時の自動車業界に衝撃を与えました。
3代目プレリュードの特徴的な点は、4輪ダブルウイッシュボーン・サスペンションを搭載していたことです。このサスペンションシステムは、高い操縦性と安定性を提供し、プレリュードの走行性能を大幅に向上させました。しかし、もっと注目されるべきは、プレリュードが史上初めて「4WS」(4輪操舵)をオプションで設定したことです。
4WSは、前輪だけでなく後輪も左右に動くことで、車両の操縦性を大幅に改善するシステムです。後輪が前輪と同じ方向にわずかに曲がることで、車両の向きを素早く変えることができるのです。この技術により、ドライバーはよりスムーズにレーンチェンジを行うことができ、操縦性が向上しました。
4WSの同位相機能は、実はただの操縦性向上のための装置ではありませんでした。この機能は、特に安全性を考慮して設計されたものでした。運転中に急に子供などが道路に飛び出してきた場合、ドライバーはすぐにハンドルを切る必要がありますが、実際にはハンドルを切ってから車両が向きを変えるまでにはわずかでもタイムラグがあります。
このタイムラグにより、車両が蛇行する危険があるのです。
4WSは、この問題を解決するための装置です。前輪と同じ方向にわずかに後輪も曲げることで、タイムラグを最小限に抑え、ドライバーがハンドルを切ると同時に車両が即座に向きを変えることができます。これにより、運転中の蛇行運転のリスクが大幅に減少するのです。
しかし、ホンダはこの4WSを安全装置として宣伝することはありませんでした。その理由は、アメリカのPL法(製造物責任法)に関連しています。アメリカでは、子供の飛び出しによる事故が実際に毎年発生しており、もし日本でホンダが4WSを蛇行運転防止装置として宣伝していた場合、アメリカでのPL訴訟のリスクが高まると考えられたのです。
訴訟を回避するために、ホンダは4WSを「スムーズなレーンチェンジが可能な装置」として宣伝せざるを得ませんでした。
現代の自動車安全基準は、当時の基準よりもはるかに厳しくなっています。歩行者保護のため、ボンネットの厚みが増し、リトラクタブル・ヘッドライトも廃止されています。これにより、現代のクルマはより安全な設計が求められていますが、3代目プレリュードのようなデザインはもはや作ることができません。
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