新年の晴れやかな空気は、ある一言で凍りついた。主人公は22歳の会社員。年始の挨拶で賑わう実家に、分家の長男である53歳の男性——近隣でパチンコ店の店員として働く、いわゆる“おじさん”——が現れ、唐突にこう切り出したのだ。
「いやぁ、ここまで上玉に育つとは思ってなかった。俺のために申し訳ない……で、いつから仕事辞めてうちに来る？」
親族一同、目玉がどこかへ転げ落ちるような沈黙。場にはお酒も入っていた。主人公が半ば笑いに逃げる。
「いやいやおじさ〜ん、冗談きついっすよwww」
ところが、おじさんは笑わない。むしろ不思議そうに首をかしげ、鼻で笑ってみせる。
「え？ 本気だよ、何言ってるんだwww。
ずっと結婚したいって言ってたじゃないか」
空気が変わった。主人公の背筋に冷たさが走る。「まとめ」で見たことのある“あの展開”が、現実に迫ってくる気配。苦笑いは引きつり、心は引き波のように遠のいていく。そこへ父の不用意な一言が火薬に火をつけた。
「娘には彼氏がいますから」
直後、テーブルにガチャンと音が鳴り、食器が震えた。
「ふざけるなぁぁ!!」
怒号が座敷を裂き、湯気のたつお雑煮も、笑い声も、一瞬で色を失う。「俺と結婚するために痩せて綺麗になったんだろ!? いつから浮気してた!?」——おじさんは温度の壊れた機械のようにヒートアップし続ける。祖父が諭す声も届かない。母と祖母は親戚の子どもたちを別室へ避難させ、場は緊急事態の様相を帯びた。
主人公は涙声で叫ぶ。「おじさんと結婚するつもりなんて微塵もないです！ 浮気じゃないです！ いい加減なこと言わないで！」 しかし、その必死の否定が、逆に相手のスイッチを踏み抜いてしまう。
「黙れこのイン乱女！ 許さない！」
ついにおじさんはテーブルのフォークを掴み、振りかぶる。刹那、主人公は咄嗟に弟の影に隠れて後退、父や叔父ら男性陣が飛び込み羽交い締めにする。金属の冷たい音が畳に落ち、緊張が弾けた。祖父の怒声が轟く。
「この子と関係はあったのか!? そんな証拠はあるのか!?」
荒い息を吐きながら、おじさんは勝ち誇ったように言い放つ。
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