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「ねぇ、その赤ちゃんの泣き声、正直うるさくない?」と隣人に言われると思っていた夜——ポストに入っていたのは“苦情ゼロの手紙”だった。 怖くて何度も壁に耳を当てていた私が見た“たった一文”に、涙が止まらなくなった理由とは…。
2026/06/25 告発

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夜中、また赤ちゃんが泣いた。

私はその瞬間、心臓がギュッと縮むのを感じた。

(ああ、まただ……)

シングルマザーの私にとって、夜はいつも“戦い”だった。

赤ちゃんの泣き声。それを止められない自分。そして何より怖いのは——隣の存在。

「若いし、車もブンブンうるさいタイプだし…」「絶対、限界きたら苦情くるよね」

何度もそう思った。

壁に耳を当ててしまう自分が嫌だった。どこかでドアが強く閉まる音がするたび、ビクッとした。

(もうすぐ怒鳴られるかもしれない)

そんな“最悪の想像”ばかりしていた。

ある日。

いつものように寝不足のまま玄関を開けたときだった。

ポストに、白い紙が一枚入っていた。

手紙。

嫌な予感しかしなかった。

(やっぱり来たか…)

震える手で開いた。

そこに書かれていたのは——

「赤ちゃんの泣き声、全然気にしないでください」

一瞬、意味が理解できなかった。

え?

クレームじゃないの?

続きがあるんじゃないの?

でも何度読んでも、その一文だけだった。


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そこから先は、ただの手書きの文字。

「夜遅くに大変ですよね」「無理しないでくださいね」

気づいたら、涙が出ていた。

止まらなかった。

怖かったのは“隣人”じゃなかった。勝手に怯えていたのは、私の方だった。

その日から少しずつ、世界の見え方が変わった。

夜泣きの声を聞いても、もう体が固まらない。ポストを見るときの手の震えもなくなった。

代わりに残っていたのは——「大丈夫かもしれない」という、小さな安心だった。

後日、思い切って手紙の主に会った。

隣の部屋から出てきたのは、想像していた“怖い若い男”じゃなかった。

少し眠そうで、普通の若い女性だった。

私と同じくらい疲れた顔をしていた。

彼女は軽く笑って言った。

「夜泣き、うちも昔あったんで」

その一言で、全部つながった気がした。

私はその瞬間、強く思った。

“迷惑をかけないように生きる”ことばかり考えていたけど、本当は違うのかもしれない。

誰かに少し助けてもらって、その代わりに誰かを少し助ける。

それでいいのかもしれない。

今の私の小さな目標は一つ。

あの日の彼女みたいに、誰かの不安を少しだけ軽くできる人になること。

もしまた夜泣きで眠れない夜が来ても、私はもう一人で怖がらない。

ポストの中には、まだあの手紙の温度が残っている気がするから。

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