父が事故で亡くなってから、母は別人のように穏やかになった。
昔の母は、少しのことで怒鳴り、泣き、物に当たる人だった。
だから私は正直、母が苦手だった。
でも父の葬儀後、母は静かにご飯を作り、私に「無理しないでね」と笑うようになった。
その変化が逆に怖かった。
「なんで急に普通の母親みたいになったの?」
そんな嫌な疑いを抱えたまま、ある日、父の遺品を整理していた。
引き出しの奥から出てきたのは、督促状の束と借金の明細。
さらに父の手帳には、こう書かれていた。
「今日も妻に怒鳴られたことにしておく。娘には本当のことを知られたくない」
母はヒステリーだったんじゃない。
父の借金と嘘を、私に見せないために一人で壊れていただけだった。
私は遺品の前で、初めて母に謝りたくなった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
次のページ