結婚してからの夫は、外では完璧な人だった。
穏やかで、優しくて、仕事もできる。
友人たちは「理想の旦那さんだね」と言い、両親も安心していた。
だからこそ、誰にも分からなかった。
家の中でだけ見せる、あの冷たい目を。
怒鳴るわけじゃない。
殴るわけでもない。
ただ静かに、
私の自由を削っていく人だった。
「君は考えすぎ」
「そんなこと言ったら周りに変だと思われるよ」
「俺が管理した方が上手くいく」
気づけば私は、自分の判断より夫の顔色を優先するようになっていた。
妊娠が分かった時、
私は少しだけ期待した。
この子が生まれれば、
夫も変わるかもしれない。
そう思ってしまった。
だから結婚記念日の旅行を提案された時も、
私は断れなかった。
「気分転換しよう」
「最近頑張ってたから」
優しい言葉だった。
あの日までは。
展望台にはほとんど人がいなかった。
風が強く、
崖の下では波が岩にぶつかっていた。
夫はスマホを構え、
私に笑いかけた。
「あと一歩後ろ」
「その方が景色が入る」
私は怖くなって、
足を止めた。
その瞬間だった。
背中に、
はっきりとした力を感じた。
押された。
そう理解した時には、
もう体が浮いていた。
次に目を開けた時、
私は病院のベッドの上にいた。
全身が痛く、
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