テレビ番組『劇的ビフォーアフター』は、日本中で愛され続けたリフォーム番組でした。しかし、その裏には大きな問題が隠れていたのです。
まず紹介するのは、2009年11月に放送された東京都中野区にあるラーメン店Nさんの自宅です。問題のリフォーム後、家の中には1メートルもの段差が残り、それが原因で奥さんがアキレス腱を切るという悲劇が発生しました。リフォームの依頼内容は、大通りに面した窓が開けられないこと、車庫の設置など、合理的なものだったにもかかわらず、匠によって行われたリフォームは依頼主の期待を大きく裏切る結果となりました。
匠は「空間方程式の芸術家」として名を馳せていた建築士T氏でしたが、段差を解消せずに階段式の収納スペースを設けた結果、家の使い勝手は悪化。さらに、リフォーム前よりも家が狭くなり、日当たりも悪くなったことで、Nさん一家は非常に不便な生活を強いられることに。番組上ではリフォーム成功の演出がなされましたが、実際には家が欠陥住宅として診断され、Nさんは番組とT氏を相手に裁判を起こしました。
次に紹介するのは、2014年7月に放送された「孫がはいはい出来ない家」です。依頼主の家は元々喫茶店だったため、居住空間は業務用設備がそのまま残されており、土足で生活しなければならない不便な状態でした。匠に依頼し、リフォームを行うことになりましたが、問題はその費用でした。
リフォーム当初の予算は2100万円。しかし、匠が提案したデザインを実現するために、最終的に予算が2900万円もオーバーしてしまったのです。
依頼主は予算オーバーを知らされておらず、事後報告で追加費用を要求されましたが、支払いを拒否。その結果、施工会社が依頼主を訴える事態となりました。
リフォーム自体には大きな問題はなかったものの、予算管理のずさんさが裁判に発展してしまったケースです。番組の制作側が予算を管理しなかったことも、トラブルの一因とされています。
最後に紹介するのは、2013年6月に放送されたパリでのリフォーム案件です。築150年を超える古いアパートで、5人家族が暮らすには狭すぎるという依頼主の悩みを解決するために、匠が派遣されました。しかし、このリフォームもまた問題が山積みでした。
まず、アパート自体が非常に狭く、台所の隣には浴槽がないシャワールームしかありませんでした。匠は「京町家の水神」として知られるS氏が担当しましたが、パリでのリフォームは日本とは異なる規制や文化の違いもあり、思うようには進みませんでした。リフォーム後、インテリアや収納に工夫は見られたものの、視聴者からは「使い勝手が悪そう」「日本風のデザインが合わない」といった批判が相次ぎました。
このリフォームは訴訟には発展しませんでしたが、その内容がネットで炎上し、視聴者の間で大きな話題となりました。日本とは異なるパリの住宅事情に苦しむ匠の姿が、逆に「神回」として視聴者に強い印象を残しました。
『劇的ビフォーアフター』は、その感動的な演出と匠の技術で多くのファンを獲得してきました。しかし、すべてのリフォームが成功するわけではなく、今回紹介した3つの事例のように、時には依頼主との間にトラブルが発生し、裁判沙汰になることもあります。リフォームは依頼主にとって一生に一度の大事業であり、しっかりとした打ち合わせと信頼できる業者を選ぶことが何よりも大切です。
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