大手企業に勤める俺・大輔は、マッチングアプリで知り合った女性・叶恵(かなえ)と婚約していた。
最初こそ気も合い、結婚を意識する関係だったが、付き合いが深まるにつれて見えてきたのは、叶恵の浪費癖と自己中心的な性格だった。
「このバッグ、限定なのよ。私のような“光と影の芸術”には必要経費よ」
そんな言い訳で、俺名義のクレジットカードを使い込み、月に何十万も使うのが当たり前。
注意しても「私は完璧な女なのよ。あなたが私にふさわしくなる努力をしなさい」と返される始末だった。
さすがにこのまま結婚などできない。
俺は彼女に最後通告を突きつけた。
「これ以上無駄遣いをしないと約束するなら、考え直す。できないなら、今日で婚約は解消だ」
一度は渋々約束した叶恵だったが、それも束の間。再び高級ブランドを買い漁り、男からのプレゼントを自慢げに披露してくる。
挙句の果てには「私のような女が婚約者であることに感謝してほしい」とまで言い出した。
ついに堪忍袋の緒が切れ、俺は婚約破棄を宣言した。
その二週間後。
「妊娠したの。年収1000万の男の子よ」
叶恵が見知らぬ男・クラオを連れて俺の家に現れた。
俺は即答した。
「婚約破棄だな。もう要件は済んだ。私物は後で着払いで送るから、さっさと出て行ってくれ」
これで終わったと思ったのだが、数日後――
「ねえ、あなたの年収っていくら?」
電話の相手は、まさかの叶恵だった。
「どなたですか?」
「叶恵よ!あなたの元婚約者!」
「そんな人いましたっけ。ちなみに今は年収3000万くらいですけど?」
俺は株式トレーダーとして、副業でも成功を収めていた。
すると叶恵の声色が変わる。
「ねえ、大輔。やっぱり私たち、やり直しましょうよ。あなたの子供を産んであげるわ」
「無理です。お断りします」
そう告げて電話を切り、着信拒否設定をした。
その後、クラオと叶恵は再び現れ、衝撃的な話を切り出した。
「実はお腹の子、大輔の子だったのよ。DNA鑑定も済んでる」
証拠として差し出された鑑定書――
だが、それは俺の調査で偽造されたものであると判明していた。
真相を突きつけると、叶恵は観念した。
「だって…お金が欲しかったのよ!」
そう、全ては金目当ての詐欺だったのだ。
俺はその場で警察に通報。偽造に関与した医師も含め、関係者全員が逮捕された。
数百万円の損害賠償と職場解雇という、叶恵とクラオにとっては最悪の結末。
一方、俺はというと…。
「大輔さん、今月も無駄遣いがありましたね。これからは将来のためにも倹約を心がけましょうね」
そう優しく叱ってくれる、金銭感覚もしっかりした新しい婚約者と平穏な日々を過ごしている。
完璧を気取った元婚約者に振り回された日々は、今や笑い話だ。
――地に足のついた幸せこそ、何より価値がある。そう実感している。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
次のページ