5年ほど前、私たちの職場にAという30代の男性が途中入社してきた。彼は、以前の職場でメンタル面に問題を抱えており、その結果、心の健康を損ねて退職したという。A自身がそのことを話してくれたが、その後、私たちは彼をサポートすることを決意した。彼にはやる気があり、能力も高かったため、みんなで手を差し伸べ、彼が安心して仕事に集中できる環境を作り上げていった。
上司はAをサポートするために、会社の資金を使って資格を取得するチャンスを提供した。Aはその支援を受け、見事に資格を取得し、仕事に対する自信を深めていった。社員一同が「良かったね♪」と喜び、Aの成長を温かく見守っていた。しかし、予想外の展開が待っていた。
Aが突然退職を決意した。理由は、取得した資格を生かして大幅に給料がアップするという条件で、他の同業他社から引き抜きのオファーを受けたからだ。法律的には問題ないが、私たちは複雑な気持ちを抱えていた。
転職先の状況が変わり、実際の採用は数ヶ月先になったため、Aはまだ私たちの職場に残ることになった。しかし、以前のように手厚いサポートを受けることはなかった。私たちは、顧客に迷惑がかからない範囲で、Aが犯したミスをフォローすることもなく、プライベートの愚痴を適当に聞き流していた。決していじめたり、仲間外れにしたりするわけではなかったが、サポートの手を引いたことは明白だった。
Aはその変化に戸惑っていたようで、予想外の反応を見せていた。
彼は、みんなが親切に接してくれたのは自分の魅力があったからだと思っていたのだろうか。職場を去ることを決めた時点で、私たちはすでに後ろ足で砂をかけられていると感じていた。そのため、今更、彼に対して温かい支援を続ける気にはならなかった。
数週間後、AからLINEで相談が来た。しかし、私たちの心情はすでに冷めており、正直なところ、彼のメンタルに対しても興味がなくなっていた。
私の返信は、予想通り冷たいものだった。「知らねよ。お前のメンタルなんかどうでもいいよ。」彼が感じている不安や悩みについて共感することもなく、ただ一言で終わらせた。彼が職場を去った時に、自分の行動がどれだけ私たちの信頼を裏切ったのかを理解することはなかったのだろう。
この出来事は、職場の雰囲気に大きな変化をもたらした。みんながAに対してどれだけサポートを惜しまなかったかを考えると、彼の行動は一層無念だった。
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