松島南(みなみ)、39歳。私は県立病院で働く産婦人科医で、7歳の娘・カリンを育てている。夜勤もある仕事だけど、カリンは理解が早い子で、「ママ、今日遅い?」と聞きながらも、私の白衣の意味をちゃんと知ってくれていた。
「今度の日曜、遊ぶ約束入れないでね。お出かけするから」「どこ行くの?」「あなたの七五三。神社でお参りして、着物着て、写真も撮るよ」「お姫様みたいになれる?」「うん、可愛くなれる」
カリンは大河ドラマが大好きで、歴史の台詞を真似して得意げに笑う。そんな娘の笑顔が、私の心を何度も支えてくれた。――あの女に壊されかけた、過去があったから。
私には妹がいる。ナナ。昔から、人のものを欲しがる子だった。小学生の頃はリボン、中学生では私が買ったカイロや小物。貸せば返さない。「お姉ちゃんより私に似合う」と笑って奪う。高校生になった頃、奪う対象は“物”から“人”に変わった。
サッカー部のエース、斎藤先輩。
私の彼氏だった。「体操服忘れちゃった、貸して」妹はわざとらしく困り、斎藤先輩が声をかけると、妹は一気に距離を詰めた。そして、彼は言った。「南、ごめん。別れよ。ナナちゃんが可愛くてさ」妹は悪びれず、「気に入っちゃったんだもん。仕方ないじゃん」と笑った。
私はその悔しさを勉強にぶつけ、医学部に合格し、家を出て妹と距離を置いた。二度と、あの笑い方を近くで見ないために。
時が過ぎ、私は同じ病院で働く医師と付き合い、妊娠をきっかけに籍を入れることにした。相手の名は、松島正(まさ)――私の夫になる人。母に電話をすると、うっかり妹の耳にも入ったらしい。
「お姉ちゃん、医者と結婚?いいなぁ。紹介してよ!」嫌な予感はした。だから顔合わせも、入籍も、妹に詳しく知らせないようにした。……のに。
入籍直後、妹から電話が来た。「まー君、覚悟決めたって。お姉ちゃん捨てて私と一緒になる覚悟」「何言ってるの?」「この1ヶ月、毎日のようにデートしたの。
駆け落ちしようって決めたの!」
私は血の気が引いた。家に帰ると夫がいない。連絡もつかない。けれど結論は拍子抜けだった。夫はただ買い出しに出ていて、スマホを家に置き忘れていただけ。妹の話は嘘――そう思い、私は“相手にしない”を選んだ。
そして、7年が経った。
七五三当日。美容師の親友・明りにヘアメイクをしてもらい、カリンは着物姿でくるくる回っていた。
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