有休明けの日だった。
仕事を終えて、
いつも通り帰宅した。
妻からは昼間、
短いLINEが来ていた。
「今日は早く帰れそう」
それだけ。
特に深く考えていなかった。
でも玄関を開けた瞬間、
妙な空気を感じた。
静かすぎる。
リビングへ向かうと、
妻がソファに座っていた。
背中を向けたまま、
動かない。
「ただいま」
そう声をかけても、
返事がない。
違和感を覚えて近づいた瞬間、
俺は固まった。
妻の背中。
白いシャツに、
赤いマーカーで文字が書かれていた。
『給料泥棒でごめんね♡』
意味が分からなかった。
冗談?
悪ふざけ?
でも次の瞬間、
妻の肩が小さく震えていることに気づいた。
泣いていた。
「……何これ」
自分でも驚くくらい、
低い声が出た。
妻はゆっくり振り返った。
目が真っ赤だった。
「職場で……いたずらされて……」
その瞬間、
頭の奥で何かが切れた。
妻は元々、
有休を取ることに罪悪感を持つタイプだった。
迷惑かけてないか。
周りに嫌われてないか。
いつも気にしていた。
そんな人間の背中に、
これを書いた?
しかも、
“♡”付きで?
悪意しかない。
俺は深呼吸した。
怒鳴るな。
冷静になれ。
でも、
怒りは消えなかった。
「責任者、誰?」
妻は慌てて言った。
「いいよ……大ごとにしたくない……」
でも俺は、
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