ある日のこと。私は車に知人を乗せて、いつものようにセルフのガソリンスタンドに立ち寄った。給油は昔から好きで、むしろ人に任せたくないほど。だからセルフしか使わないし、淡々と給油を終えて車に戻ったのだが——
その瞬間、知人が口を開いた。「怖いんだったら、俺がやってあげたのにw」
……は?何を言っているのか一瞬理解できなかった。怖い? 給油が? 好きでやってるのに? むしろ譲りたくなんかないんだけど?
彼は続けざまにドヤ顔でこう言い放った。「俺、静電気とか怖くねーし」
……ああ、なるほど。そういうことね。思わず「この人、スタンドのゴミ箱に置いてきていいかな…」と真剣に考えたほど。
淡々と私は言ってやった。「給油中に静電気が発生すると、引火して爆発することもあるんだよ」別に彼が一人で爆発しようが関係ないけど、周りに巻き込まれる人がいたら大迷惑だ。
それがプライドに触ったのか、彼は顔をしかめて反論してきた。「はぁ? ガソスタの店員だって除電シート触ってないじゃん?」
「ガソリンスタンドの制服は、静電気に対応した特殊仕様なんだよ」と、私は冷静に返した。だってそのまま店員にクレームでもつけられたら気の毒すぎるから。
すると今度は、「博識? そんなこと知ってていつ使うの?」と、なぜか小馬鹿にしたようなセリフが飛んできた。もうここまできたらコントだ。
私は静かに、「今かな」と返した。完全勝利だった。
実は私の祖父は昔ガソリンスタンドを経営していた。給油は子どもの頃から慣れ親しんだ行為だし、家族の車を任されていたこともある。ペーパードライバーの彼とは給油経験の“桁”が違う。
だがそれでも彼の無敵の鋼メンタルは揺るがない。後日、別の場所で共通の友人に「静電気除去シートって何のためにあるか知ってる?」などと語り出していた。
知識よりも大切なのは、無知を恥じる謙虚さ。静電気が怖くない自慢を武勇伝にしている人が、給油中の爆発事故のニュースに真っ先に「怖っ」とか言いそうで、内心ため息が止まらない。
もう次から、彼はガソリンスタンドには連れて行かないと心に誓った。
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