結婚して二年、子どもにはまだ恵まれていなかったが、夫とは穏やかな日々を過ごしていた。義実家は車でわずか十分の距離にあり、義父母とはたまに回転寿司に行く仲だった。だが、その日、私は一人でその回転寿司に向かった。
年度末の忙しさに疲れ果てていた私は、夫が職場の飲み会で夕飯が不要だということもあり、「今日は自分にご褒美を」と思ったのだ。いつもは遠慮して手を出さなかった金皿や銀皿も、今日は好きなだけ食べようと決めていた。
そこに、まさかの義父母が現れた。先に私を見つけた義母が微笑みかけてきたが、義父の視線は私の前に積まれた皿に釘付けだった。
金皿、銀皿、そして高級な絵皿――義父が家族で来る時に「NG」と決めていたものばかり。
義父は無言で踵を返し、店を出て行った。義母も黙ってその後を追った。
翌朝、義母から電話が来た。「お父さんに謝りなさい」と。夫は既に出勤しており、私はこれから職場へ向かうところだった。「仕事がありますので」と断ると、「いいから先に来なさい!」と強引に。
気乗りはしなかったが、仕事中に気が散るのも嫌で、私は義実家へ向かった。途中、夫に電話し、「謝る必要ある?謝るとして、どう言えば?」と尋ねると、彼は「謝らなくていいと思うなら、謝らなくていい」と言ってくれた。
義実家に着いた途端、居間に通されることもなく、玄関口で義父の怒声が飛んできた。
「旦那が仕事してる時に贅沢三昧とは何事だ!子ども一人も産めないくせに、高いもんばっかり食いやがって!生意気な女だ!お前なんぞ嫁だと思ったことはない!」
胸が煮えくり返った。「生意気で結構です。自分で稼いだ金で寿司を食べて、何が悪いんです?そんなことで文句を言う人に、嫁と思われたくもありません!」
その言葉に義母が激昂し、私を突き飛ばした。無防備だった私は思い切り倒れ、右手首を強打。病院で診てもらうことに。
夫が迎えに来てくれ、全てを話すと、彼は黙って私を連れて義実家へ向かった。「今すぐ謝れ」と義父母に迫ったが、私の怒りは冷めていなかった。「謝らなくて結構です。どうせ本心からじゃないでしょうし」
義父は「その通りだ。なんで俺が嫁ごときに頭を下げる必要がある」と吐き捨て、義母はただ狼狽するばかり。
その日を境に、私たちは義実家と絶縁した。
後日、この話を聞いた義姉が義実家に電話し、義父母を激しく叱責。その後、義姉も義実家との関係を絶った。
それから五年。私たちには男の子と女の子、二人の子どもが生まれた。それを親戚から聞きつけた義父母が、「勘当を解いてやってもいい」と伝えてきたという。
夫はこう答えたそうだ。「勘当されたんじゃなく、こちらから縁を切ったんです」
発端があまりにもくだらなく、情けない気持ちになったという夫の言葉に、私も同じ気持ちだった。
ただ寿司を食べただけなのに――それが、家族の形を大きく変えた出来事だった。
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