離婚して、子どもは元嫁が引き取った。
俺は養育費を毎月5万払ってる。
相場より多いって言われたけど、それは「俺の子ども」だから。
それは揺らがないと思ってた。
この前、面会の相談をした。
せめて月に一度でも顔が見られたらって。
成長するところを、ちゃんと目に焼き付けたくて。
でも、元嫁は静かに言った。
「……それはできない。
必要以上に懐かれたら困る。」
一瞬、頭が真っ白になった。
拒絶とか、怒りとかじゃない。
その言葉があまりに真っ直ぐで、痛かった。
元嫁は強い。
ちゃんと「母親」になっていた。
俺よりずっと、覚悟を決めていた。
「会えば、期待させちゃう。
あなたに戻れると思わせちゃう。
小さい子にはそれが一番残酷なの。」
言われて、何も言い返せなかった。
俺は、子どもを“見たい”だけだった。
でも元嫁は、子どもの“心”を考えてた。
養育費を払う理由も、会いたい理由も、
俺は「俺」の気持ちばかりだった。
帰り道、ポケットの中でスマホが重かった。
写真も動画も何もない。
声も思い出せない。
でも確かに、そこに「いる」。
見守るだけの父親って、こんなに苦しいんだな。
会えないなら、何のために払うのか。
払っている俺は、本当に「父親」なのか。
…でも、それでも払う。
俺の気持ちのためじゃなくて、あの子の未来のために。
いつか、必要とされる日が来るのだとしたら。
そのとき胸を張れるように。
なあ。
「会えない父親」でも、父親でいていいんだよな?
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